
相続した実家が売れないとき、更地にすればいいという話をよく聞きます。
建物があるから買い手がつかない。壊してしまえば土地として売れる。不動産会社から言われることもあるでしょうし、調べればそう書いてある記事もたくさん出てきます。
ただ、解体には費用がかかります。しかも先に払う費用です。壊したのに売れなかったら、手元には何も残りません。そこで踏みとどまっている人は多いと思います。私も同じところで止まりました。
この記事で分かること
更地にしても売れないことがあるのは、どういう場合か
建物をなくすと固定資産税の扱いがどう変わるか
自分で解体しなくても済む売り方があること
解体を決める前に、順番として何を先にやるか
税と制度の部分は国税庁と国土交通省の資料にあたっています。確認したのは2026年9月22日です。制度は改正が続くので、実際に動くときは原典を見直してください。
空き家を更地にしても売れないことがある
先に結論を書きます。建物があることが売れない理由なら、更地にする意味はあります。ただし理由が別のところにあるなら、壊しても状況は変わりません。
更地にして解決するのは、買い手が「この建物が邪魔だ」と感じていた場合だけです。道路に接していない、周りに買いたい人がいない、権利関係が動かせない。こういう理由で止まっているなら、建物をなくしても同じ場所に留まります。
しかも解体費は戻ってきません。だから順番として、先に理由を確かめる必要があります。
更地にしても買い手がつかないのは、どういうときか

生成AIで作成したイメージです
解体が効かないのは、次のような場合です。
そもそも土地を欲しい人がいない
いちばん多いのがこれです。人口が減っている地域では、更地でも買い手が現れないことがあります。
建物があると買い手が限られるのは事実です。ただ、限られた買い手すらいない場所では、建物をなくしても増えません。土地の値段がつかない地域では、解体費のほうが売却代金より大きくなることも起こります。
建て替えができない土地である
再建築不可と呼ばれる土地です。道路に接している幅が足りない、あるいは建築基準法上の道路に面していない。
この場合、更地にすると状況はむしろ悪くなることがあります。今ある建物は法律が変わる前に建ったものとして存在できていますが、壊してしまえば新しく建てられません。建物つきなら使い道があったのに、更地にすると何も建てられない土地になる。ここは慎重に判断してください。
名義や権利が動かせない
共有名義のまま合意が取れていない、相続登記が済んでいない。この状態では、更地にしても売る手続きに入れません。
順番が逆になっています。壊すのは、売れる状態を整えたあとの話です。
売れない理由の切り分けが先
自分の家がどれに当たるのかを先に見きわめてください。切り分け方は相続した実家が売れない5つの理由にまとめました。
すでに不動産会社に断られているなら、不動産屋に断られた空き家は、なぜ断られたのかのほうも読んでみてください。断られた理由が分かると、解体が効くかどうかの判断材料になります。
空き家を解体して更地にすると、固定資産税の扱いが変わる
もうひとつ、解体を決める前に知っておきたいのが税の話です。
住宅用地特例が外れる
住宅が建っている土地には、固定資産税を軽くする仕組みがあります。国土交通省の空き家対策の特設サイトに数字が出ています。200平方メートル以下の小規模住宅用地は6分の1。200平方メートルを超える部分の一般住宅用地は3分の1に減額されます。2026年9月22日に確認しました。
空家法とは(国土交通省・空き家対策特設サイト)
建物をなくして更地にすると、この軽減の対象から外れます。何倍になるかは土地の評価額や自治体の計算によって変わるので、ここで断定はできません。実際の金額は自治体の資産税の窓口で確認してください。
壊さずに置いておけば安全、という話でもない
では建物を残しておけばいいのかというと、そちらにも別の事情があります。
令和5年の空家法の改正で、管理不全空家という区分が新しく設けられました。同じ特設サイトでは、適切に管理がされていない特定空家予備軍の空き家と説明されています。倒壊の危険性が高いなど周囲に著しく悪影響を及ぼす空き家は特定空家とされ、市区町村が指定します。
そして、指導に従わず勧告を受けると、税負担の軽減措置である住宅用地特例が受けられなくなると書かれています。つまり建物を残していても、管理されていない状態が続けば特例から外れる可能性があります。
放っておけば税金が安いまま、という前提はもう成り立ちません。
自分で解体しなくても済む売り方がある

生成AIで作成したイメージです
ここが、解体を考えている人にいちばん伝えたいところです。
買主が壊す場合でも、特例の対象になることがある
相続した家を売るときの税の特例に、被相続人の居住用財産を売ったときの特別控除があります。国税庁のタックスアンサーNo.3306を見てみます。対象は平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売った場合。譲渡所得から最高3,000万円まで控除されます。ただし令和6年1月1日以後の譲渡では、相続人の数が3人以上だと上限が2,000万円になります。
注目したいのはここです。令和6年1月1日以後に行う譲渡に限って、譲渡後に買主が耐震改修または除却した場合にも特例が適用される。そういう規定が追加されています。2026年9月22日に確認しました。
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
要件は細かく決まっています。昭和56年5月31日以前に建築されたこと。区分所有建物登記がされている建物でないこと。相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。ほかにも条件があります。自分の家が当てはまるかどうかの判断は税理士か税務署に確認してください。
ここで言いたいのは、解体費を自分で出す前に、売り方の選択肢を先に調べる価値があるということです。買主が壊す前提で話がまとまるなら、先に払う費用が要りません。
建物つきのまま引き受ける買取もある
もうひとつが買取です。買取業者は自分で住む人を探さないので、建物つきのまま引き受けることがあります。解体も残置物の処分も業者側で進める形なら、こちらが先に費用を出す必要がありません。
そのかわり、仲介で一般の買い手に売れた場合と同じ金額にはなりません。買ったあとの費用と事業としての利益が入るためです。金額と、先に出す費用の有無。どちらを取るかという比較になります。買取の金額が安すぎないかの確かめ方は、空き家は仲介と買取どっち?にまとめました。
空き家の解体を決める前に、この順番で進める
ここまでを踏まえた順番です。上から順にやると、無駄な出費が減ります。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | なぜ売れないのかをたしかめる。建物のせいなのか、土地や権利のせいなのか |
| 2 | 名義をたしかめる。登記事項証明書を取れば、共有なら人数まで分かる |
| 3 | 建物つきのままで売れるかを先に当たる。買取なら壊す前でも話ができる |
| 4 | 税の特例に当てはまるかを税理士か税務署にきく。買主が壊す形もふくめて |
| 5 | 自治体に解体の補助金があるかきく。工事を始める前の申請が条件になっていることが多い |
| 6 | そのうえで壊すと決めたら、見積もりを何社かから取る |
補助金は自治体ごとに内容が違うので、ここで一律には書けません。役所の代表番号にかけて、空き家の解体の補助について聞きたいと伝えれば、担当の課につないでもらえます。年度で変わるため、去年の情報が当てにならないこともあります。
見積もりを取る段になって、一括見積もりの営業電話が心配なら、解体の一括見積もりは電話がしつこい?に選び方をまとめました。
空き家を更地にすることについて、よくある質問
更地にしたら固定資産税はどのくらい上がりますか
住宅用地特例から外れるので上がります。ただし何倍になるかは土地の評価額や自治体の計算によって変わるため、一律には言えません。倍率を断定している情報は鵜呑みにせず、自治体の資産税の窓口で自分の土地の数字を確認してください。
解体してから売ったほうが高く売れますか
買い手が建物を邪魔だと感じている場合は、売りやすくなることがあります。ただし解体費は先に出す費用で、戻ってきません。更地にしても買い手が現れない地域もあるので、解体前に建物つきで売れるかどうかを当たっておくほうが安全です。
解体費が用意できません
先に費用を出さずに進める形がないかを探してください。建物つきのまま引き受ける買取や、買主が壊す前提での売却です。自治体によっては解体の補助制度がある場合もあります。
更地にしたあとで後悔するのはどういうときですか
再建築ができない土地を更地にしてしまった場合と、売れる見込みを確かめないまま壊してしまった場合です。どちらも元に戻せません。だからこの記事では、確かめる順番を先に書きました。
空き家のまま放置しておくとどうなりますか
管理されていない状態が続くと、管理不全空家や特定空家として勧告を受けることがあります。勧告を受ければ住宅用地特例から外れます。国土交通省の特設サイトに書かれているとおりです。放置が安全な選択肢だった時期は過ぎています。
まとめ|空き家は、壊す前に売れるかどうかを確かめる
建物が理由で売れないのでなければ、更地にしても状況は変わらない
再建築不可の土地は、更地にすると使い道がさらに狭まることがある
更地にすると住宅用地特例から外れる。ただし放置して勧告を受けても外れる
令和6年1月1日以後の譲渡なら、買主が除却する形でも特例の対象になりうる(要件の確認は税理士か税務署へ)
解体は最後の手順。名義の確認と、建物つきで売れるかの確認が先
解体は一度やると元に戻せません。費用も先に出ていきます。だからこそ、順番を守るだけで結果が変わります。
壊すかどうかを決めるのは、売れるかどうかを確かめたあとで十分です。
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