空き家の無料査定は、あとから断れます。断るときの言い方と、契約前に見ておくこと

空き家の査定を頼もうとして、途中で手が止まったことはありませんか。

電話番号を入れるところまで進んで、そこで閉じてしまう。頼んだらそのまま売る流れに乗せられるのではないか。あとで気が変わったときに、断れないのではないか。そう思うと、どうしても指が止まります。

私も同じところで止まりました。親の家をこれからどうするのか考えはじめたものの、まず金額を知りたいだけなのに、その一歩が重い。売ると決めたわけではないのに、決めた人として扱われそうな気がしていました。

この記事で分かること

査定を頼んだ段階では、まだ何も約束していないということ
断りづらさが、どこから生まれているのか
その場で口に出せる、短い断り方
媒介契約を結ぶ前に、契約書のどこを見ておくか

断り方の話なので、一般論だけで書いても意味がありません。不動産会社に向けて書かれた実務記事を実際に読みにいって、業者側がどう教えられているのかを確かめました。制度の部分は国の資料にあたって、確認した日付をそのまま載せています。

空き家の査定を頼んでも、断って構わない

先に答えを書きます。査定を頼むことと、売却を任せる約束をすることは別のものです。金額を聞いたあとで「やめておきます」と伝えて終わりにできます。それで責められる筋合いはありません。

売却を任せるときに交わすのが媒介契約です。国土交通省は消費者向けのページで、媒介契約を「売主や買主が取引の仲介を依頼する不動産業者との間で締結する契約」と説明しています。2026年9月21日に確認しました。
不動産取引に関するお知らせ(国土交通省・消費者の皆様向け)

つまり、任せるかどうかはその契約を結ぶところで決まります。査定はその前の段階にあります。金額を出してもらっただけの状態は、まだ入口に立っているだけです。

気が重いのは分かります。わざわざ調べてもらったのに断るのは悪い、という感覚。ただ、そこは相手も織り込んで動いています。次の節で、その理由を書きます。

空き家の査定が断りづらいのは、あなたの性格のせいではない

打ち合わせ用のテーブルに置かれた書類とボールペンと湯呑み

生成AIで作成したイメージです

断りづらさには理由があります。しかもそれは、あなたの気質とは関係のないところにあります。

不動産会社向けに書かれた記事を読んでみた

売主向けの記事はいくらでも出てきます。それとは別に、不動産会社の担当者が読むための実務記事があります。そちらを読むと、同じ場面がまるで違う言葉で書かれていました。

読んだのは業界向けメディアの「不動産会社のミカタ」に2024年4月22日に載った記事で、媒介契約の諸規定を扱ったものです。2026年9月21日に確認しました。
誤解の多い媒介報酬の請求時期や契約更新について(不動産会社のミカタ)

責める気持ちで読みにいったのではありません。相手の事情が分かれば、こちらも落ち着いて話せるはずだと思ったからです。

報酬が生まれるのは、売買契約を結んだときだと書かれている

いちばん目を引いたのがここでした。仲介の報酬を請求できるようになるのは引き渡しや決済が済んだときではなく、売買契約が成立した時点だという説明が、はっきり書かれています。

裏を返すと、査定の段階では相手の売上はゼロです。訪問して近隣の取引事例を調べ、金額を出すところまで、すべて先払いの投資として動いています。

だから前に進めたい。意地の悪さではなく、仕事の形がそうなっているからです。あなたが感じる圧のようなものは、目の前の担当者の人格ではなく、報酬の仕組みから来ます。

安い空き家の仲介手数料は、国が上限を引き上げたばかり

もうひとつ、空き家に限った事情があります。

仲介手数料は物件価格に料率をかけて計算するので、安い家ほど手数料が小さくなります。ところが空き家の調査にかかる手間は、値段に比例して減ったりしません。遠方の現地調査、権利関係の確認、残置物の状況。金額の小さい物件ほど、割に合わなくなります。

国土交通省は令和6年6月21日に「不動産業による空き家対策推進プログラム」を公表し、その施策として媒介報酬の規制を見直しました。令和6年7月1日以降、価格が800万円以下の宅地建物については上限が30万円の1.1倍、つまり税込33万円までとされています。2026年9月21日に確認しました。
不動産業による空き家等の流通の取組を強力に後押しします(国土交通省・報道発表 令和6年6月21日)

わざわざ上限を引き上げたのは、報酬が低いままでは引き受ける会社が増えないと見たからでしょう。ここは私の受け取り方なので、そう読んだという程度に取ってください。ただ、安い空き家の相談が軽く扱われたように感じた経験があるなら、その感覚には裏づけがあります。

ここは覚えておくと得です。この特例を使う場合、報酬額について媒介契約を結ぶ際にあらかじめ説明を受け、合意する必要があるとされています。解説しているのは不動産流通推進センターで、2025年2月の記事です。2026年9月21日に確認しました。
低廉な空家等の売買等の媒介報酬の特例(改正)(公益財団法人不動産流通推進センター)

断りづらさは、気の弱さの問題ではない

ここまでを並べると、構図が見えてきます。相手は契約が成立するまで無報酬で動いていて、しかも安い空き家では割に合いにくい。その状態で時間を使ってもらえば、断るのが気まずくなるのは当然です。

あなたがはっきり言えないのではなく、言いにくくなる条件がそろっているだけです。ここを取り違えると、断れない自分を責めることになります。そこは切り離して考えてください。

空き家の媒介契約は、その場で結ばないほうがいい

査定を断れるという話とは別に、契約の話をしておきます。この節は制度の内容なので、国の資料と条文で確認したところだけを書きます。

査定額は「意見」であって、約束ではない

机の上で冊子になった書類のページをめくっている手元

生成AIで作成したイメージです

提示された金額は、その値段で売れることの保証ではありません。宅地建物取引業法34条の2第2項は、宅建業者が売買すべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。

条文が「意見」という言葉を使っているところが大事です。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、根拠として価格査定マニュアルや同種の取引事例など、合理的な説明がつくものが挙げられています。根拠を書面で示すときは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく鑑定評価書ではないことを明記するという整理もあります。2026年9月21日に確認しました。
宅地建物取引業法 法令改正・解釈について(国土交通省)

だから査定額を見て「思ったより安い」と感じたときは、根拠を聞いていいことになります。聞かれる前提の数字なので、遠慮する場面ではありません。逆に、根拠の説明が出てこない金額は、そのまま信じないほうがいい。

専任で結ぶと3か月しばられる。自動更新の特約は無効

媒介契約には3つの型があります。他社にも同時に頼める一般媒介と、1社に絞る専任媒介、自分で買主を見つけたときも任せた会社を通す専属専任媒介です。

1社に絞る型については期間の決まりがあります。宅地建物取引業法34条の2第3項は、専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができず、これより長い期間を定めたときはその期間は3か月とすると定めています。更新について書かれているのは同条第4項で、依頼者の申出による更新ができるものとされ、更新後の上限もやはり3か月です。

そして自動更新の特約は無効です。同条第10項がこれらの規定に反する特約を無効としていて、東京地裁令和3年3月29日の判決も、自動更新条項によって契約が自動的に更新される余地はないと述べています。不動産流通推進センターが2023年8月に解説しています。2026年9月21日に確認しました。
専任媒介契約の有効期間を自動更新とする特約の有効性。(公益財団法人不動産流通推進センター)

一方、一般媒介には法律上の期間制限がありません。全日本不動産協会は、国土交通省の定める標準媒介契約約款では専任媒介契約と同じく3か月以内で定めるものとしていると説明しています。法律の縛りがないぶん、契約書に書かれた期間を自分の目で見るしかない、ということになります。2026年9月21日に確認しました。
一般媒介契約について(公益社団法人全日本不動産協会)

3か月というのは、短くはありません。売ると決めていない段階で結ぶ必要はどこにもない。決めてから結べば十分です。

媒介契約を結ぶ前に、ここだけは見ておく

いざ結ぶときに見る場所を、先に書いておきます。持ち帰って読む時間をもらえば、全部その場で確かめなくても間に合います。

見るところ 確かめること
契約の型 一般か専任か専属専任か。他社にも頼める状態を残すかどうか
有効期間の欄 専任と専属専任は3か月が上限。一般は法律の上限がないので日付を読む
更新の欄 自動更新になっていないか。更新は自分から申し出る形が原則
報酬の欄 800万円以下の空き家は特例の対象になる。特例を使うなら事前の説明と合意が必要
査定額の根拠 何を根拠にした金額か。鑑定評価とは別のものだという前提で聞く

制度の扱いは個別の事情で変わります。契約の内容そのものに不安が残るなら、宅建業を所管する都道府県の窓口や、公的な相談窓口に聞くほうが確実です。

空き家の査定を断りたいとき、何と言えばいいか

ここからは具体的な言い方です。断る理由をきれいに組み立てようとすると、かえって口が重くなります。短くて、そのまま言える形にしておくのがいい。

その場で言える、短い言い方

使えるのはこのあたりです。

「金額が分かってよかったです。家族と相談してから決めます」
「今日のところは、数字を知るのが目的でした」
「持ち帰って考えます。決めたらこちらから連絡します」

共通しているのは、相手を否定していないところです。査定そのものには礼を言って、決定だけを先に延ばす。それだけで足ります。

理由を細かく説明しないほうが、むしろ話が早い。理由を出すと、その理由に対する答えが返ってきて、会話が続いてしまいます。

持ち帰る理由は、行く前に用意しておく

その場で考えるのは大変なので、先に決めておきます。相続した家なら、材料はたいてい手元にあるはずです。

兄弟や親族と共有になっているなら、全員の合意が要るというのがそのまま理由になります。名義が親のままなら、登記が済んでいない状態で売却の話を進められないという事実がある。遠方に住んでいるなら、現地を見てから決めたいと伝えられます。

どれも作り話ではありません。ほんとうにそういう段階なのだと伝えるだけです。嘘をつかずに済むと、断ったあとの気分も違います。

強く引き止められたときの線引き

たいていは引き止められません。それでも粘られたときの線を、自分の中に引いておきます。

今日は契約書に署名しない。これを決めておくだけで、会話がどう転んでも困りません。署名していなければ、任せる約束は動き出していないからです。

その場を離れたあとに電話やメールが続くこともあります。連絡はいらないと一度はっきり伝えて、それでも止まらないようなら、やりとりの記録を残しておくといい。国土交通省の消費者向けページには、トラブルを未然に防ぐための情報や相談先の案内も載っています。

空き家の査定を何社にも出すのは、非常識か

非常識ではありません。むしろ1社だけで決めるほうが、判断の材料が足りなくなります。

比べられる前提で、無料になっている

査定が無料なのは、比べられることを見込んでいるからです。1社に独占的に頼まれる前提なら、最初から有料の調査として請求する形になっているはずです。

そして会社によって得意な物件が違います。仲介が中心の会社と、再建築不可や共有持分を専門に買い取っている会社では、同じ家を見ても出てくる数字と提案が変わります。空き家はここの差が大きい。だから複数に聞く意味があります。

すでに何社かに断られている場合は、不動産屋に断られた空き家は、なぜ断られたのかもあわせて読んでみてください。断る側の事情が分かると、次にどこへ持っていけばいいかが見えてきます。

ただし、増やしすぎると自分の負担になる

とはいえ、数を増やせば増やすほどいいわけでもありません。

同じ事情を何度も説明し直すのは、思ったより疲れます。相続の経緯や、兄弟の状況や、残置物の話。そのたびに家の記憶を引っぱり出すことになる。私は3社くらいが現実的だと思っています。

余談ですが、話を聞く順番も少し関係します。最初に会った担当者の説明が、そのあとの基準になってしまう。気になる会社を1社目に持ってこないほうが、比べるときに落ち着いて見られるかもしれません。

何社かにまとめて頼むなら、一括査定という方法もある

1社ずつ電話して、同じ説明をくり返すのはたいへんです。物件の情報を一度入力するだけで、複数の不動産会社に査定を頼める「一括査定」というサービスもあります。

たとえばリビンマッチは、東証グロースに上場しているリビン・テクノロジーズ株式会社(証券コード4445)が運営しています。公式サイトによると、一度の入力で最大6社に査定を頼めて、利用に費用はかかりません。大手から地域の会社まで全国数百社と提携していて、住所の近さと入力した内容に対応できるかで会社が選ばれるそうです。

気をつけたいのは、申し込んだあとの流れです。公式サイトの説明では、申し込むと不動産会社から査定の連絡が届く流れ。何社かから電話が来るものと思っておけば、あわてずに済みます。連絡が来たら、この記事の「その場で言える、短い言い方」がそのまま使えます。

一括査定が向いているのは、ふつうに仲介で売れそうな家です。街なかにある、それほど古くない、名義の整理も済んでいる。そんな家なら、何社かの数字を並べて比べる意味が大きい。

反対に、再建築不可や旧耐震で「売れない」と言われている家なら、買取を専門にする会社に直接聞くほうが話が早いこともあります。その考え方は空き家は仲介と買取どっち?にまとめました。リビンマッチの内容は、2026年9月24日に公式サイトで確認しています。

空き家の査定を断ることについて、よくある質問

査定を頼んだだけで、売らないとまずいでしょうか

まずくありません。売却を任せる約束は媒介契約から始まるので、そこに署名していなければ、金額を聞いただけの状態です。無料査定として受けたのであれば、断ったことに対して費用を求められるのが普通ではありません。もし費用の話が出るようなら、申し込んだときにどこまでが無料と書かれていたかを確かめてください。

訪問査定を申し込みました。来る前に断ってもいいですか

問題ありません。早く伝えるほど、相手の予定も空きます。日程が決まっているなら、当日を待たずに連絡しておくほうが気が楽です。

媒介契約を結んでしまいました。やめたいときはどうすればいいですか

まず契約書を出して、解除について書かれた条項と有効期間を読んでください。そのうえで会社に相談するのが順番です。話が進まないときや契約の扱いに納得できないときは、宅建業を所管する都道府県の担当課や、公的な相談窓口に事情を伝えて聞くことをおすすめします。個別の契約がどう扱われるかは、ここで断定できません。

一度断った会社に、あとからまた頼むのは気まずくないですか

気にする必要はないと思います。時期が来てから戻ってくる売主は珍しくありません。断ったときに礼を伝えてあれば、再開の連絡もしやすくなります。

空き家だと仲介手数料が高くなると聞きました

令和6年7月1日以降、価格が800万円以下の宅地建物には媒介報酬の特例があり、上限が税込33万円までとされています。国土交通省の消費者向けページで2026年9月21日に確認しました。使う場合は媒介契約を結ぶ際に説明と合意が必要とされているので、契約前に金額を確かめておいてください。

まとめ|空き家の査定を取っても、売らなくていい

査定と媒介契約は別のもの。署名していなければ、任せる約束は始まっていない
断りづらいのは、報酬が売買契約の成立まで発生しない仕組みから来ている。性格の問題ではない
査定額は法律上「価額についての意見」で、根拠を示す義務がある。鑑定評価とは別のもの
専任と専属専任は3か月が上限で、自動更新の特約は無効。一般媒介は期間を自分で読む
断るときは理由を細かく説明せず、持ち帰る形にする。今日は署名しないと決めておく

自分の家がどの型にあたるのかが分かっていると、査定の場での会話がずいぶん楽になります。再建築不可なのか、旧耐震なのか、名義が固まっていないのか。切り分け方は相続した実家が売れない5つの理由にまとめました。

査定を取ることは、売ると決めることではありません。決めるために数字を取りにいくだけです。

数字を見たうえで、今年は動かないという結論になってもいい。親の家の話は、他人の都合で急ぐものではないと思います。

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