
親の家を相続して書類を見ていたら、土地は地主さんのものだった。家は親の名義でも、土地は借りていただけ。
不動産会社に相談すると「借地はむずかしいですね」と言われる。地代はこれからも毎月かかる。いっそ家を壊して、更地にして返したほうが早いのではないか。
そう考えたときこそ、少しだけ手を止めてください。借地の家は、壊した瞬間に手放せるものが減ってしまうことがあります。
この記事で分かること
借地の実家が「売れない」と言われる理由
相続するときに地主の承諾がいるのか
家を壊す前に確かめておくこと
借地の実家を手放す道と、相談先の選び方
法律の部分は、e-Gov法令検索で借地借家法と民法の原文を読んで書いています。2026年9月24日に確認しました。個別の判断は、弁護士や司法書士に相談してください。
借地の実家が「売れない」と言われる理由
借地の家を売るというのは、建物といっしょに「土地を借りる権利」を次の人へ渡すことです。ここに地主さんが関わってきます。
民法612条は、借りている人が地主の承諾なしに借りる権利をゆずることを認めていません。つまり、買う人を見つけても、地主さんがうんと言わなければ話が進まない。これが「借地はむずかしい」と言われるいちばんの理由です。
ただ、むずかしいのは「ふつうの売り方」で売る場合の話です。借地をあつかい慣れた会社や、地主さん本人という買い手もいます。道がないわけではありません。
相続するときに、地主の承諾はいるのか
ここで迷う人が多いので、先に分けておきます。
| 場面 | 地主の承諾 | 根拠 |
|---|---|---|
| 親から相続する | いらないと考えられている | 民法896条 相続人が権利をまるごと引き継ぐ |
| 相続したあと第三者に売る | いる | 民法612条 |
| 地主が承諾してくれない | 裁判所に許可を求める道がある | 借地借家法19条 |
民法896条は、相続人が亡くなった人の権利をまるごと引き継ぐと定めています。相続は「ゆずる」こととは別の扱いなので、地主の承諾はいらないというのが一般的な考え方です。
ただし、相続したことは地主さんに伝えておきましょう。地代をだれが払うのかを決めておかないと、あとの話し合いがこじれやすくなります。
借地の実家は、壊す前に確かめること

生成AIで作成したイメージです
この記事でいちばん伝えたいのはここです。借地の家は、建物があることで守られている部分があります。
借りる権利を守っているのは、登記された建物
借地の権利そのものは、登記していないことがほとんどです。それでも土地の上に自分名義で登記した建物があれば、その権利を第三者に主張できると借地借家法10条は定めています。たとえば地主さんが土地をほかの人に売っても、借りる権利を主張できるということです。
建物がなくなると、この守りが弱くなります。同じ10条は、建物がなくなったあとも権利を守るには、土地の見やすい場所に建物のことや建て直す予定を掲示する必要があると定めています。しかも掲示で守れるのは2年までです。なくなった日から2年がすぎると、そのあいだに建物を建てて登記していない限り、この守りは続きません。
契約の更新も、建物があることが前提
借地借家法5条は、期間が終わるときに更新を求められるのは「建物がある場合に限り」としています。先に壊してしまうと、更新を求める足がかりを自分から手放すことになりかねません。
なお、借地借家法は国土交通省の解説によると平成4年8月に施行された法律です。それより前に始まった借地の契約は、更新について以前の法律である借地法の決まりが続きます(借地借家法附則6条)。親の代からの借地は、この古い契約であることが多いはずです。
建物の名義を、相続人に変えておく
10条の守りは「借りている人の名義で登記された建物」が前提です。親の名義のままだと、いざというときに困ることがあります。
相続登記は令和6年4月1日から義務になっていて、それより前に相続した不動産も令和9年3月31日までに登記が必要です(法務省)。建物の名義変更は、借地を守るためにも早めに済ませておいてください。
更地にしたときの税金の変化は、更地にしても売れない土地の話で書いています。借地の場合は、それに加えて上の二つを失うことがあると覚えておいてください。
借地の実家を手放す道は、四つある
1. 地主さんに買い取ってもらう
いちばん話が早いのは、地主さん本人に借地の権利と建物を買ってもらう形です。地主さんにとっても、土地が自由に使えるようになるので、話がまとまることがあります。いくらで買ってもらえるかは話し合いしだいです。
2. 地主さんの承諾をもらって、第三者に売る
ふつうの売り方です。承諾をもらうときに「承諾料」を求められることがあります。額は法律で決まっていないので、話し合いになります。
地主さんが承諾しないときは、借地借家法19条で、裁判所に「承諾に代わる許可」を求める申し立てができます。地主さんに不利になるおそれがないのに承諾しない、という場合の決まりです。裁判の手続きなので、弁護士に相談することになります。
3. 借地をあつかう会社に買い取ってもらう
借地の権利を専門に買い取る会社があります。買ったあとに地主さんと話し合うのは会社の側なので、自分で交渉しなくて済むのが大きな違いです。そのかわり、値段は地主さんの承諾をとってふつうに売る場合より下がると考えておいてください。
4. 期間が終わるときに、建物を買い取ってもらう
契約の期間が終わって更新しない場合、借地借家法13条で、借りている側は地主に建物を時価で買い取るよう求めることができます。ただ、期間がいつ終わるかは契約しだいなので、まずは契約書を見てください。
どの道を選ぶにしても、仲介で売るか買取で売るかの考え方は同じです。空き家は仲介と買取どっち?もあわせて読んでみてください。
借地の地主さんに話す前に、手元でそろえるもの
相談に行く前に、次のものを探しておくと話が早く進みます。
借地の契約書(期間・更新・建て替えの決まりが書いてある)
地代の領収書や振込の記録(払ってきたことの証拠)
建物の登記事項証明書(建物がだれの名義か)
固定資産税の通知書(建物の評価がわかる)
契約書が見つからないこともあります。親の代からの借地だと、書面がそもそもないこともめずらしくありません。その場合は、地代の記録が契約があったことの手がかりになります。
借地の実家を、借地にくわしい会社に相談する
地主さんと自分で話すのが重いなら、借地をあつかい慣れた会社に一度見てもらうのも手です。首都圏の物件なら、借地の買取を受けつけている窓口があります。ここはエリアで分かれるので、物件の場所で選んでください。
PRピタットハウス秋葉原北店|東京・神奈川・埼玉・千葉の借地
借地を専門にあつかう会社(株式会社ハウスクル)の窓口です。地主さんとのあいだに専門家が入り、相談と査定の出張は無料です(2026年9月24日確認)。
PRLIXIL不動産ショップ|東京都の借地
対応は東京都の物件だけです。問い合わせと査定訪問の費用はかからず、「話だけ聞いてみたい」相談も受けつけると公式ページにあります(2026年9月24日確認)。
東京都の物件なら、二つに聞いて比べることができます。首都圏の外にある借地は、上の二つの対象ではありません。地元の不動産会社に「借地をあつかっているか」を最初に聞いてみてください。
借地の実家について、よくある質問
更新料を払えないときはどうなりますか
借地借家法には、更新料を払う義務の決まりがありません。払うかどうか、いくらかは契約の内容しだいです。契約書に更新料の決まりがあるかを先に確かめて、払えない事情があるなら早めに地主さんに相談してください。
相続した借地を、そのまま地主さんに返すことはできますか
返すこと自体は話し合いでできます。ただ、契約に「更地にして返す」という約束があると、解体費用がこちら持ちになることがあります。壊す前に、地主さんに買い取ってもらえないかを一度聞いてみてください。
借地の建物が古すぎても、売ることはできますか
古さだけで道がなくなるわけではありません。ただ、建物が古くなって朽ちると借地の権利がなくなることがあるかは、契約の時期で扱いが違います(借地借家法附則5条)。古い借地ほど、早めに相談したほうが安心です。
まとめ|借地の実家は、壊す前に相談する
借地の家を第三者に売るには地主の承諾がいる(民法612条)
相続そのものには承諾はいらないと考えられている(民法896条)
建物を壊すと、借りる権利の守りや更新の足がかりが弱くなる(借地借家法10条・5条)
地主が承諾しないときは、裁判所に許可を求める道がある(借地借家法19条)
手放す道は、地主に買ってもらう・第三者に売る・借地にくわしい会社に売る・建物を買い取ってもらうの四つ
借地の実家は、たしかにふつうの家より手間がかかります。それでも、壊してしまう前なら選べる道はいくつも残っています。契約書を探して、名義を確かめて、それから相談する。その順番だけ守れば、あわてずに済みます。

